燈々無尽
このコラムは高千穂町の広報誌にも「病院だより」として掲載しています。
「腹腔鏡手術」のはなし
外科医 尾崎 宣之
高千穂町広報誌2013年12月号掲載分
腹腔鏡手術とは?
腹腔とは「おなかのなか」のことで、胃や腸などの臓器が納まっている空間です。腹腔鏡はおなかの中を観察する「カメラ」のことです。腹腔鏡手術は、腹部に0.5~1cm程の穴を数か所あけて、そこからカメラや専用の電気メス、鉗子(かんし)という組織を持ったりはがしたりする道具などを入れて、テレビモニターを見ながら行う手術のことです。最終的には切除する胃や腸をおなかから取り出さなければいけないので5cm程の傷がおなかにつきますが、おなかを20〜30cmにわたって縦に切り開く「開腹手術」と呼ばれる従来の手術の傷と比較するとその差は明らかです。
腹腔鏡下手術の利点は?
最大の特徴は低侵襲(体への負担が少ない)手術であることです。傷が小さいことは、美容的に優れているだけでなく、術後の痛みが軽く、早期の離床が可能です。これらによって、入院期間の短縮、早期の社会復帰が可能になりました。
どういう病気が対象になるの?
当院では原則として学会で示されているガイドラインを遵守しています。
胆石症:現在では標準治療になっており、当院でも早くから導入しています。
胃 癌:基本的に早期胃癌が対象です。ただし、内視鏡(胃カメラ)で切除できる早期癌は内視鏡切除を優先します。
大腸癌:一部の直腸癌を除く殆どの早期・進行大腸癌が対象になります。対象外となるのは、他臓器浸潤(他の臓器に癌がくい込んでいるもの)、腫瘍径が7~8cm以上の場合です。
その他、食道裂孔ヘルニア、胃良性腫瘍や粘膜下腫瘍の胃部分切除、腸閉塞の癒着剥離術、小腸部分切除、虫垂切除、腹腔内リンパ節生検なども可能です。
当院でも積極的に腹腔鏡手術を導入し、町民の皆様により良い医療を提供しようと努力しています。上記疾患でお悩みの方は、一度外科外来でご相談下さい。